大腸ポリープ

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概要・原因

大腸の管の表面(最も浅い層)は粘膜でできています。
この粘膜層の一部がイボのように隆起してできたもののことを大腸ポリープといいます。
大腸ポリープはその構造(組織)により腫瘍性のポリープとそれ以外(非腫瘍性)のものに分けられ、専門的にはさらにこまかく分類されます。
このうち、大腸がんになる可能性があるものは腫瘍性ポリープである「腺腫」です。
大腸がんは、正常な粘膜から腺腫(良性腫瘍)が生じ、それが悪性化してがんになる場合と、腺腫の状態を経ずに一気にがんになる場合とがあります。
このうち、腺腫となった後に大腸がんになるものについては、腺腫のうちにそのポリープを取ってしまうことで大腸がんを予防することができます。

大腸ポリープからがんへの進展経路

「前がん病変」から、がんへの主な進展経路には、以下の2つがあり、腺腫,TSA, SSA/Pの担がん率はいずれも約10%で、同程度の発がんポテンシャルを有すると考えられています。

1
腺腫から進展する【adenoma-carcinoma sequence】
2
  • traditional serrated adenoma(TSA)や
  • sessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)

などの鋸歯状ポリープから進展する 【serrated pathway】

他の経路には、 

3
Peutz – Jeghers症候群や若年性大腸ポリポーシスなどのがん遺伝子あるいはがん抑制遺伝子の変異を背景に発生した過誤腫性ポリープ
4
潰瘍性大腸炎やクローン病、結核に関連したdysplasia(異型性)からの発がん経路(colitic cancer)

などがあります。
大腸ポリープは、統計的に、5mm以下のものでは約0.5%、6~9mmのものでは約3.3%、10mm以上のものでは、約28.2%にがんが見つかり、大きくなるにつれて、がんである確率が上昇していきます。
そして、大腸がんの主要な経路は、(1)、(2)のポリープからがんに進展する経路ですので、小さいうちに、あるいは腺腫、鋸歯状ポリープのうちに、大腸ポリープを切除してしまうことで、大腸がんを予防することが可能です。

大腸ポリープと大腸内視鏡

大腸の腺腫性ポリープの最大の危険因子は、年齢(50才以上)および大腸がんの家族歴です。親兄弟が大腸内視鏡(大腸カメラ)を受けて、大腸ポリープがあると言われた方は、早めの検査をオススメしております。
特に大腸ポリープが多発している方が多い家系や、大腸がんの方が多い家系の場合には、家族性・遺伝性腫瘍(大腸ポリポーシス・リンチ症候群)のことがあるため、注意が必要です。
また、年齢に関しては、50歳以上が特に危険因子とされていますが、統計上は40歳近くから増加が顕著となってきていますので、40歳となった時点(可能であれば30代のうちに)で大腸内視鏡(大腸カメラ)検査を受けておくのが理想です。

加えて、信頼性が高い海外論文により確実視されている危険因子には、赤身肉(特にウィンナーなどの保存・加工肉の過剰摂取)、高カロリーな食事習慣、肥満(運動不足)、過量のアルコール、喫煙があります。逆に、運動不足の解消などの生活習慣の改善により、発生率を低下させられる可能性も示唆されていますが、効果は限定的であるとも考えられています。また前述しましたが患者様の中には、遺伝性大腸がんという、家系的に大腸がんになりやすい方がおられ、特に、「大腸にたくさんのポリープができる場合(家族性ポリポーシス)」、「家族内に大腸がんや関連する多臓器がんを多く発生する場合(リンチ症候群)」などの場合に疑われます。
よって、血縁家族に大腸ポリープや大腸がんと診断された方がいる場合には、年齢が若くても、積極的に検査を受けることがすすめられています。
欧米では、一親等に大腸がんの血縁家族の方がいると、自分の危険度が3倍近くになるというデータもあります。

大腸ポリープの症状

小さなポリープでは、ほとんどの場合において無症状です。
つまりポリープのほとんどは、大腸内視鏡(大腸カメラ)検査で偶然に見つかっています。 大きなポリープでは、時に出血や、粘液便、腹痛、便通異常などをきたす場合がありますが、やはりほとんどは無症状です。
大腸がんになる可能性のあるポリープをより早期に見つけるためには、症状がないうちでも、大腸内視鏡(大腸カメラ)検査を中心としたがん検診を受けることが重要です。

検査

大腸内視鏡(大腸カメラ)による検査で、ポリープの形態、表面の性状、色調、大きさなどの診断が可能で、同時に組織診断(顕微鏡での診断)のための、生検や内視鏡治療(切除)も行うことができます。

治療

がん化しうるポリープは、発見次第、切除することが望ましいと言えます。
欧米では、小さい段階で腺腫性ポリープを切除することで、大腸がんによる死亡率を低下しうることが示されています。
日本のガイドラインでは、5mm以下のポリープに関して、即座に切除せずに、経過観察する選択肢も許容されています。
しかし、経過観察していく手間があること、観察中に増大していけば結局切除が推奨されること、患者様が精神的な負担を抱えたままであること、小さなポリープが次の検査で発見できない可能性があることなど、小さいポリープでも患者様自身が切除を希望する場合が多数であることなどの理由から、実務上は、小さくても発見次第切除される場合が多いのが現状です。

内視鏡を用いた日帰り手術

腺腫性ポリープと、リンパ節転移の危険性がほとんどない大腸がんについては、内視鏡による治療により治癒可能です。
治療の方法は、病変の形(肉眼系)や大きさにより使い分けられ、ポリペクトミーや、粘膜切除術(EMR)、粘膜下層剥離術(ESD)などの方法があります。
このうち、外来で施行可能なのは、ポリペクトミーとEMRです。
当院では、切除に際して、後出血や穿孔などの合併症がより少ないとされるコールドポリペクトミー/EMR(電流を使わずにポリープを切除する方法)を採用しています。 また、当院では検査同日の日帰りの治療をしており、検査と治療を別々の日にすることはありませんが、外来で安全に内視鏡治療を行うために、ポリープの大きさは10mm程度までをひとつの目安としており、個数は4個程度までとしております(大きなポリープが複数ある場合、個数は更に少なめとしております)。

入院が必要なケース(医療機関との連携)

外来での切除が危険と判断される場合、大きなポリープで一括切除が望ましい場合や、抗血小板薬・抗凝固薬などの血液をサラサラにする薬を止めることが難しい方の場合などでは、入院可能な専門施設や医療機関をご紹介させていただいております。

手術の合併症と注意事項

ポリープ切除による主な合併症は、出血(術中出血、後出血)と穿孔ですが、穿孔は大きなポリープに対するEMRやESD治療などに関連した合併症であり、実務上問題となるのは後出血です。
後出血は、検査治療後に自宅に戻ってから、治療部位から再出血をすることをいい、0.3~1%程度の低い確率ですが、ゼロにできない事象です。
後出血は、術後安静を保っていたとしても起こりえますが、腹圧をかける運動や動作、アルコールや刺激物の摂取で出血が誘発されやすくなります。
また出血した場合には、ときに入院治療を要することもあります。そのため、ポリープを切除した場合には、これらの合併症予防の観点から、1~2週間程度、運動・飲酒・遠出の外出を控えるようお願いすることがあります。