胃がんとピロリ菌の関係性
ピロリ菌感染と胃がん発生のメカニズム
日本の胃がんの90%以上は、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の持続的な感染によるものです。
ピロリ菌は主に幼少期に胃の中に住み着き、アンモニアなどを産生して胃の粘膜を傷つけます。
感染すると免疫反応によって胃の粘膜に慢性的な炎症(慢性胃炎)が引き起こされ、年月を経るごとに粘膜が萎縮して「萎縮性胃炎」へと進行します。
この萎縮性胃炎の広がりが、胃がん発生の最大のリスクとなります。
胃の粘膜が腸の粘膜のような組織に置き換わる「腸上皮化生」という状態を経ることで、遺伝子の変異が蓄積され、がん化のリスクが飛躍的に高まることが分かっています。
除菌治療によるリスク軽減
ピロリ菌は、一度感染すると自然に排除されることはほとんどありません。
しかし、抗生物質と胃酸を抑える薬を用いた除菌治療を行うことで、菌を完全に体内から排除することができます。
除菌を行うことで、胃潰瘍のリスクや将来的ながん化のリスクを大きく低下させることが可能です。
特に、若い世代や萎縮性胃炎が進行する前の段階で除菌を成功させることが理想的とされています。
ただし、すでに進んでしまった萎縮性胃炎や腸上皮化生のすべてが元通りになるわけではありません。
そのため、「ピロリ菌の除菌をしたら終わり」ではなく、除菌後も胃がんのリスクがゼロになるわけではないという点をしっかりと認識しておく必要があります。
最近の日本における胃がんの死亡率と動向
かつて日本の胃がんによる年間死亡者数は、長年にわたり約5万人前後で推移していましたが、近年の統計では明確な減少傾向にあります。
国立がん研究センターなどのデータによると、胃がんの死亡数は年間4万人を下回る水準まで減少しており、人口10万人あたりの年齢調整死亡率は約31.5人となっています。
しかし、日本人の癌の死亡数では第4位と決して低くはありません。
除菌の普及や内視鏡による早期発見・早期治療の進歩により、胃がんは「かつて猛威を振るった難治性がん」から「予防・早期発見により克服しうるがん」へと変化しつつあります。
早期発見の鍵となる内視鏡検査
胃がんは、初期の段階では自覚症状がほとんど現れません。進行してから症状が出て受診した場合、治療の負担が大きくなったり、予後に関わったりするケースが少なくありません。
だからこそ、症状がない段階での定期的なスクリーニングが極めて重要となります。
バリウム検査も広く行われていますが、粘膜の色調変化やごく微小な病変、ピロリ菌感染に伴う微細な炎症所見をとらえるためには、胃内視鏡検査(胃カメラ)が圧倒的に優れています。
内視鏡であれば、医師が直接粘膜の隅々まで観察でき、怪しい部位があればその場で組織を採取して病理検査(生検)を行うことも可能です。
ご自身の胃の健康を守るためにも、まずは一度、内視鏡検査を受けましょう。