顔の見える在宅診療
先日、明石薬剤師協会とケアマネージャー協会共催の研修会で、訪問診療についてお話しさせていただく機会がありました。
当日はケアマネージャーさん、薬剤師さんなど約40名が集まり、患者さんの状況に応じた医療や支援について、グループワーク形式で意見交換を行いました。
普段は電話やFAX、連携ツールなどでやり取りすることも多い多職種の皆さんと、実際に顔を合わせて一つの症例について考える時間はとても貴重でした。
私自身も、皆さんの意見を聞きながら「なるほど、そんな見方もあるんだ」と気付かされることが多く、とても勉強になりました。
在宅診療は「チーム戦」
私が在宅診療をするうえで、ずっと大切にしていることがあります。
それは、「顔の見える関係」で、患者さんにとって最適・最善の医療を考えることです。
在宅診療は、医師一人では到底できません。
訪問看護師さん、薬剤師さん、ケアマネージャーさん、施設職員さん、福祉用具の方など、さまざまな職種が一つのチームになって初めて成り立つ医療だと思っています。
訪問看護師さんは、私がそばにいない時間にも患者さんを見守り、必要な医療や処置を行ってくれる存在。
ケアマネージャーさんは、患者さんの「暮らし」を一番近くで見て、小さな変化にも気付いて知らせてくれる存在。
そして薬剤師さんは、お薬と患者さんの生活をつないでくれる存在です。
どの職種が欠けても、良い在宅医療はできません。
昔の私には、担当医の「顔」が見えていませんでした
実は私は医師になる前、薬剤師として働いていました。医学部在学中の4年間、調剤薬局でアルバイトをし、調剤や服薬指導のほか、高齢者施設へのお薬の配達もしていました。
当時の私は処方箋を見て、薬を準備して、患者さんに届けることが仕事でした。
今振り返ってみると、その施設の担当医がどんな先生なのか、ほとんど知りませんでした。
今の私からすると、ちょっと考えられません(笑)。
もし当時、担当の先生と顔を合わせて、「この患者さん、最近ちょっと薬が飲みにくそうですよ」「食事量が減っています」そんな何気ないことを話せる関係ができていたら、もっと違う関わり方ができていたのかもしれません。
だからこそ今、医師という立場になって、薬剤師さんやケアマネージャーさん、訪問看護師さんたちと「何かあったら気軽に連絡できる関係」でいたいと思っています。
立派な連携システムがあることも大切ですが、「あの先生にちょっと聞いてみよう」「あの看護師さんに相談してみよう」そう思える関係のほうが、在宅医療では案外大切なのかもしれません。
患者さんを真ん中に
在宅診療では、病気だけを診ていてもうまくいかないことがたくさんあります。
「できるだけ家で過ごしたい」「家族に迷惑をかけたくない」「最期まで好きなものを食べたい」患者さんによって、大切にしたいことはそれぞれ違います。
だからこそ、それぞれの職種が持っている情報や気付きを持ち寄って、「この患者さんにとって一番いいことは何だろう」と一緒に考える。
私は、そんなチームでありたいと思っています。
ありがたいことに、当クリニックの訪問患者さんは100人を超えました。
診療地域も、西は播磨町から東は神戸市垂水区、北は神戸市西区(西神)まで広がっています。
患者さん、ご家族、そして日頃から一緒に支えてくださっている地域の皆さんが信頼して任せてくださっているからこそ、ここまで続けてくることができました。本当に感謝しています。
これからも患者さんを真ん中に、地域の皆さんと顔の見える関係を大切にしながら、「この地域なら、最期まで安心して暮らせる」そう思っていただける在宅医療を、みんなでつくっていきたいと思います。
